ピアノお手入れマニュアル
ピアノは、木材・フェルト・金属などさまざまな素材から作られた繊細な楽器です。良い音と弾き心地を長く保つためには、定期的な調律・適切な温湿度管理・日頃のお手入れが大切です。このマニュアルでは、ご家庭でできるピアノの管理方法をピアノ調律師が分かりやすくご紹介します。

【項目】
1.調律の頻度 2.温度・湿度の管理 3.掃除 4.ホコリ 5.寿命 6.インシュレーター 7.よくある質問

① 調律は年1~2回を目安に
ピアノは弾いていなくても、時間の経過や温湿度の変化によって少しずつ音程が変化します。

② 湿度は40~60%程度を目安に
高湿度だけでなく、冬場の過乾燥にも注意しましょう。大切なのは、急激な温湿度変化を避けることです。

1.ピアノ調律の頻度

一般家庭では年1~2回が目安です

ピアノには非常に強い張力で弦が張られているため、使用していなくても少しずつ音程が変化します。特にピアノを習っている方や、できるだけ安定した音程を維持したい方には、年2回程度の調律をおすすめしています。

ときどき演奏する年1回
ピアノを習っている
日常的に演奏する
音程を安定して維持したい
年2回
ピアノ教室
音楽関係者
年3回
公共施設の練習室年4回
練習スタジオ・業務用随時

長期間調律していなかったピアノでは、一度の調律だけでは音程が安定しにくい場合があります。その場合は、最初の調律から数か月~半年程度で再調律をおすすめすることがあります。

2.温度・湿度の管理

ピアノは湿気にも乾燥にも弱い、デリケートな楽器です。木材やフェルトを多く使用しているため、温度や湿度の変化によって調律・タッチ・音色が変化します。また、弦楽器のように演奏のたびに調弦を行う楽器ではないため、良い調律状態を保つには、日頃の温湿度管理が大切です。

ピアノの近くにデジタル温湿度計を置くと、日頃の管理がしやすくなります。

設置場所で注意したいこと
  • 冷暖房の風が直接当たる場所
  • 直射日光が当たる場所
  • 床暖房で過乾燥する場所
  • 気密性の高い防音室
  • 24時間換気システムにより、強い換気が行われている場所(外気の影響を受けて、過乾燥・過湿になる場合があります。)

湿気

高湿度の状態が続くと、木材やフェルトが湿気を含み、鍵盤やアクションの動きが悪くなります。


晴れた日に窓を開けて換気するのもオススメです。
除湿機を利用する場合は…
 ・コンプレッサー式や、ハイブリッド式がおすすめ。
 デシカント式は、温度が上がりやすいので注意してください。
 エアコンのドライ機能も使えますが、梅雨の時期は肌寒くなります。

三菱のムーブアイ除湿機(推奨品)

乾燥剤は効果あるの?
部屋そのものが高湿度の場合は効果が得られません。また、湿った乾燥剤を入れっぱなしにしておくのは逆効果です。なお、既に湿気による故障が発生している場合は、修理を依頼してください。

乾燥

冬は暖房によって室内が過乾燥になりやすくなります。過乾燥状態(湿度30%台)が続くと木材やフェルトが収縮して調律やタッチに影響したり、木材が割れる事があります。

湿度40%を下回る状態が続く場合は、加湿器の利用をご検討ください。加湿しすぎても良くないので、程々にお願いします。湿度が常時30%台の場合は、40%前後を目標に加湿してください。無理に60%まで加湿する必要はありません。

ピアノにお薦めの加湿器
ダイニチの加湿器は、湿度の微調整がしやすい「ハイブリット式加湿器」で、ピアノに適した設定(湿度50%)が出来るので安心です。一般的なお部屋でしたら、5~8畳用がひとつの目安です。ピアノが湿気を吸いすぎないように、少し離れた所に加湿器を設置するのもポイントです。まずは、省エネモード・湿度50%設定で徐々に様子を見てください。湿度が足りないようであれば、標準モードで60%設定に切り替えてみると良いでしょう。また、デジタル湿度計を常備して、ピアノ周辺の湿度も計測してください。

Interview

ダイニチ工業にて、インタビューを受けました
www.dainichi-net.co.jp/products/mainichi-plus/36486/

冬季は結露にも注意してください。結露によって発生した水滴により弦にサビが発生します。
煮炊をする場合は換気を十分に行ってください。

3.ピアノのお掃除

ホコリ
ピアノ用の毛ばたきでホコリを払います。細かな部分には、絵筆やペンキの刷毛を使用すると便利です。

外装の掃除
ピアノ用クロスを利用し、塗装に合ったワックスを少量使う。
★艶出し塗装:ピアノ専用ワックス(推奨品:クリーンエース)
★艶消し塗装:艶消しピアノ専用クリーナー

艶出し塗装の汚れが目立つ場合は、薄めた洗剤(推奨品:ピアノシャンプー)を使います。柔らかい雑巾を軽く水で濡らして拭いても構いません。この時にピアノの内部に水がかからないようにしてください。仕上げに、乾拭きしてからワックスを塗布してください。(乾拭きを怠ると、水ムラになります。)
有機溶剤入りのピアノクリーナーは非推奨です。

鍵盤を拭く
黒鍵…乾拭き。
・白鍵(プラスチック素材):乾拭き。汚れた時は鍵盤クリーナー(推奨品:キーフレッシュ)を利用。
・象牙や人工象牙:乾拭き。鍵盤クリーナーは使わない。

鉄骨の掃除(グランドピアノ)
鉄骨の部分(金色の)は塗装してあるので、拭き掃除しても大丈夫です。
銀色部分(未塗装)や弦は拭かないでください。
ダンパーは触らないでください。
スタインウェイなどのピアノは、内部の塗装や仕上げがデリケートなため、内部清掃については調律師にご相談ください。

ホコリとカビ

4.害虫・ホコリ対策

防虫剤
ピアノ内部には羊毛等の天然素材が使われており、虫害が発生します。特に森林や畑の近くでは注意が必要です。調律師が販売している専用の防虫剤を利用してください。

鍵盤カバーは必需品ではありません。(通気が悪くなったり、カバー自体がほつれてホコリになることもあります。)
オールカバーは、時折カバーを外して換気を行ってください。

〈湿気によってピアノ内部に大量発生したカビの例〉

5.ピアノの寿命について

「ピアノは何年使えますか?」というご質問をよくいただきますが、ピアノの寿命は年数だけでは判断できません。ピアノの個体差・設置環境・定期的なメンテナンスの有無によって、状態は大きく異なります。古いピアノでも、適切に修理・調整することで長く使用できる場合があります。

一方で、

  • チューニングピンが緩み、調律を保持できない
  • 弦や響板など主要部分の劣化が進んでいる
  • 大規模な修理が必要

といった場合には、修理費用とピアノの価値を比較して、買い替えを検討することもあります。

6.インシュレーターについて

インシュレーターとは、ピアノのキャスターの下に設置する受け皿のことです。耐震・防音に効果があるゴム製のインシュレーターは、プラスチック製のものと比べると厚みがあり、キャスターを受ける部分にも深さがあります。厚みのあるゴムの部分でピアノのキャスターから伝わる音(振動)を吸収し、床に伝わる音をインシュレーターが吸収してくれます。特にマンションでは周囲に音が伝わるのを抑える効果が得られます。

インシュレーターのチェックポイント
耐震性と防音効果のあるインシュレーター
・受け皿に深みがある物(深さが無いと、脱輪してしまう。)
・ゴムに鉄板が内蔵されているものが良い(ゴムが圧縮・変形しにくい。)
推奨品:ピアノシュレータ

インシュレーターの取付は、ピアノ専用のジャッキを利用します。一般の方がピアノを持ち上げるのは危険なのでおやめください。

よくある質問

雑音が発生する

雑音の主原因は共振です。特定の音を鳴らしたときに発生する場合もあり、調律直後に発生しやすくなります。急を要するものでなければ様子をみてください。また、ピアノの周辺に、ガラス製品や額縁、コレクションケースや小物がありませんか?雑音の原因になる場合がありますので、片付けたり、位置を変えてみてください。また、 ピアノのヒンジや金具が共振している場合があります。譜面台や鍵盤蓋、屋根や前面のパネル等を揺すりながらピアノの音を鳴らし、雑音が止まるか確認してください。

音が止まらない(高音部)

最高音部はダンパー(止音装置)が付いていないので余韻が残ります。これは故障ではありません。

調律しても違和感を感じる

調律は主に「音の高さ」を整える作業です。音程が正しくても、ハンマーの状態などによって音色にばらつきがあると、違和感を感じる場合があります。その場合は、整音(音色の調整)を行うことで改善できることがあります。また、弦やアクションなど部品の状態が原因の場合もありますので、ご相談ください。

YouTubeでも、ピアノのお手入れ方法を解説しています!